女流作家ベラ 2023年度「日本を感動させた人物10名」に選ばれる

2023年12月、、日本財経週刊、日本経済文化新聞、日本友好新聞、日本関西華文時報、日本政治評論新聞は審査員による厳正な審査と読者による投票を経て、「日本を感動させた人物10名」を選出した。そのうちの一人、女流作家のベラは日本で生活していたこともある人気の小説家だ。

ベラの文学作品は、川端康成の「哀れの美」の世界観を表しており、行間には日本の歌謡における詩情と悲しみの情が流れ、言葉は暖かく柔らかだが、精神的な核は非常に強い。国際的な視点に立って描かれた作品群は、ヒューマニズムの精神を促し、人間の平和と自由のための敬虔な祈りと叫びに満ちている。

ベラは旧名を沈鐳(シェン・レイ)という。上海で生まれ、日本にも一時期住んでいた。幼少の頃から音楽、チェス、書道、絵画を学び、「上海派」の文化に深く影響を受ける。 1980 年代半ばに日本に留学し、その後カナダに移住した。「文学の夢」を持ち続けたベラは、執筆活動に熱心に取り組み、世界中を旅しながら感じたことや見聞きしたことに基づいて、多くの恋愛小説を創作した。 『魔咒鋼琴(意味:魔法のピアノ)』は、「上海のユダヤ人」シリーズ最初の小説だ。 2007年に上海人民出版社から中国語版が出版されて以来、大きな注目を集め、ベラの代表作となっている。 ベラは2001年頃、上海の長陽路を散歩していて摩西会堂の跡地に来たとき、松葉杖をついたユダヤ人の老婦人と出会い、大きな感銘を受けたと話す。「彼女は孫たちに「ここで私は結婚式を挙げたの。向かいの建物の2階は昔はカフェで、私はそこで開かれるダンスパーティのクイーンだったのよ」と話していたのです」 この光景を見て、ベラは「上海のユダヤ人」というテーマに取り組む決意をした。それまでにもヨーロッパやアメリカでユダヤ人の友人を何人か作っていたが、歴史を正しく紐解き、小説にしていくのは簡単な仕事ではないことを十分分かっていた。ベラが取り組もうとしたのは、第二次世界大戦中、何万人ものユダヤ人難民が上海にやって来たという歴史だ。彼らの多くは提藍橋一帯に住んでいた。幸運にもナチスの迫害を逃れることができたことから、上海は「東方のノアの箱舟」と呼ばれた。ベラは構想に3年の年月を費やし、アメリカのコロンビア大学やカナダのトロント大学などの図書館で「上海のユダヤ人」に関するさまざまな記録を集めた。オーストリアなどの国を実際に訪れ手がかりを探し、ユダヤ人の家庭に入って彼らの食べ物、日常生活、宗教的礼儀作法などについて学んだ。だからこそ『魔法のピアノ』が出版されたとき、読者は行間から立ち上る第二次世界大戦戦火の煙の匂いを嗅ぎ、ポーランド系ユダヤ人のピアニスト、アダムと中国人の少女リー・メイがレニングラード上海への逃れる壮大なラブストーリーを目の当たりにできたのだ。この小説はピアノと愛を軸に20世紀の時空を舞台に展開され、数世代にわたる人々の粘り強さと苦労を描こうとしている。 ベラは故郷の上海に常に愛着を抱いており、2年前に上海に戻り定住を決めた。自分を育ててくれたこの街のために作品を書いていきたいと話す。「上海のユダヤ人」というテーマは様々な課題を包括しており、単なる悲劇やラブストーリーではなく、国境を越えて人間の「愛と寛容」を示すものだとベラは言う。上海が残した輝かしい歴史-国際主義と人道主義の精神を文学の形で表現し、後世に伝えていきたいとベラは考えている。報道によると2023年11月初めにフランスの国立オペラは上海で記者会見を開き、来年からベラの小説『生存者の歌』を原作としたオペラを世界で上演し、まずはパリで初演すると発表した。またサンフランシスコ・バレエ団プリンシパルのヤンヤン・タンは、ベラのバレエ作品『魔法のピアノ』と『生存者の歌』に出演する意思があることを表明している。 上海美術院教授で著名な彫刻家の夏陽もベラの小説『海上の金殿Ⅰ』を基に同名の彫刻を制作し、すでに完成している。上海出身であるベラは、作家であることに加えて、中国と外国の間の文化交流促進にも情熱を注いでいる。上海市が認める『中国文化を海外へ』という普及活動において2年連続表彰された唯一の外国人となった。 第二次世界大戦中に故郷の上海がユダヤ人を受け入れた歴史的背景を表現する際、ベラは日本軍の描写をステレオタイプ化するのではなく、人間性を深く表わし反映させた。ベラは歴史を尊重し、人間性を尊重し、そして国際主義の観点から人道主義の精神を説いているのだ。上海に逃れてきた約2万人のユダヤ人難民のその後の実際の生活についての言及も避けなかったし、上海でユダヤ人が生き延びられたことに日本人が関係していることも否定しなかった。ベラはその点をよく理解し、非常に冷静かつ抑制的に、戦争のために上海に流れてきた異国からの難民たちに同情、憐み、寛容、配慮を示したのだ。 ベラのどの作品にも、神田川、摩周湖、日本海が流れている。 ベラは文学的な方法で日本の民謡(歌謡)を広めただけでなく、自身のコンサートでも自ら歌い上げる。中国系カナダ人として、ベラは中国、米国、ロシア、イスラエルのアーティストらとともにステージにあがり、友情、平和、自由、愛の歌を歌ってきた ベラがコンサートなどイベントを行う様はまるで国連のようであり、米国、ロシア、イスラエル、日本、カナダなどの国々の領事館の領事たちが出席する。彼女は作家、芸術家であるだけでなく、世界に友情を伝えるメッセンジャーでもあるのだ。